2013年4月2日火曜日

明治大学 紙屋宏志


『船出の準備』


 そうか、もうこのインターンも終わってしまうのか。この体験記を書いているときに感じた率直な思いである。このインターン(研修)であったこと、感じたこと、先生の教えなどすべてを書き連ねたノートの見返しながら、私はこの文章をつづっている。辛かったこと楽しかったこと怖かったことなどが走馬灯のように頭に思い浮かぶ。

 思い返せば、きっかけは大学構内に貼ってあったポスターであった。将来の進むべき方向がわからず自分の羅針盤が狂い始めた時期に、大学構内を歩っていたとき偶然そのポスターが目に入った。それは灯台のように見えた。とりあえずやってみよう、軽い気持ちで申し込み、あれよあれよという間に本橋先生のところにインターンすることに決まった。

 開始時期は12月。初めは何をやっても注意されてばかりいた。ドアの開け閉め、ゴミの捨て方、メールの書き方・・挙げればきりがない。何をやっても失敗ばかりで、自分も先生も疲弊していた。やめようか、そのような気持ちも去来した。しかし続けていれば何かが得られるかもしれない。私は戦々恐々としながらも事務所に通い続けた。

 「君は、いったい何のために来たの?」「・・・」この言葉が私の脳裏に強烈に焼付いている。私は研修開始前に準備していたのにもかかわらず、言葉が出てこなかった。私はこの研修期間中にひたすらその問いに対する答えを探し続けた。



 研修はさまざまな面白いプログラムが用意されていた、というよりも、機会が提供され、それをどう生かすか、研修生の自由に任されていた、というのが正しいであろう。

 私は同期生の中で最初に先生の下でインターンを開始した。201212月の衆議院議員総選挙の手伝いを皮切りに、議会や委員会の傍聴のみならず、選挙区内のポスター貼り、早朝の駅頭での新聞配り、ホームページの更新作業や地元自治会のもちつき大会など、挙げればきりがないほどの多くの経験をした。政治家に対する一般人の見方、地方公務員の生き様、政治家の生き様・・世の中はすべて地道な仕事の積み重ねで成り立ち、相互の連携なくして世の中は回らない―これが短い研修期間のなかでの自分なりの社会の観察結果です。

 さまざまな研修メニューを経験してわかったことであるが、この研修の特色というべき点は、先生が学生に自らの責任の下で仕事を任せてくれるという点にある。それは学生と議員に双方にとても勇気が必要なことである。学生にとっては、サークル活動やアルバイトと違い、自分の責任のもと他のやりたいこととの兼ね合いを考えて予定を組み仕事をするので、仕事やスケジューリングも中途半端は許されない。議員にとっても、学生の仕事の瑕疵は自分で負う覚悟を持たなければならない。

社会人がひょっとしたら自分でやったほうが早い仕事を、どうして学生に任せるか?それは学生を育てようという思いがあったからであろう。良い研修生活を送るにはそこに気付けるかどうかが分岐点であった。インターンを振り返って私はそう確信している。

 私はホームページ更新作業や講演会の企画などに携わった。はじめは何度も注意されながら仕事をこなしていく研修であったが、徐々に物事を進めるコツをつかめてきた。慣れとは不思議なものである。大学の春季休暇に入ると、インターン仲間も増え、仲間と一緒に仕事をすることが楽しくなっていった。新しいアイデアや提案など創造するための方法や面白さ・・いつしか自分の中でこの研修がキツイタイヘンなものから、楽しく面白いものに変わったのである。このインターンで学んだことは決して机の上で学べることではないし、この体験記からも学びきれないであろう。



 最後に本橋先生の言の葉を整理してみる。

政治は最終的には信頼関係。信頼関係の基本は良き人間関係。良き人間関係の構築には・・・・これ以上は未来の研修生の後学のために書けない。なぜならば、一人ひとりの興味関心は異なるし、研修にかける思いや使用可能な時間・熱量も違うので、誰もが納得できる言葉はないから。しかし、私はこのインターンで宝物を見つけることができた。そして狂った羅針盤の方角もある程度定まった。大学時代という与えられた自由な時間のうちにインターンすることの意義は、それを見つけることにあるのではないだろうか?

これから研修生となる方々へ。昨日よりも今日、今日よりも明日、常に成長し続け、自分自身をアップデートしていく・・そのような気持ちのない人にはこの研修はすすめられない。変わろうという気持ちが少しでもある方はドアを叩いてみてほしい。求めよされば与えられん(新約聖書マタイによる福音書)。ぜひともこの研修で自分の宝物を見つけてほしい。私は次の宝物を探しに行く。

「君は、いったい何のために来たの?」―いまなら言える。「社会的に信頼される人間になるため。」と。これが研修中に私が見つけた自分なりの答えだ。

街では春の暖かい風が人々の肌をくすぐり、桜の花が人々の船出を祝う。ノートのページをめくると最後のページにこの体験記を書き綴っていることに気付いた。たくさんの出来事があった。いい仲間に出会った。素晴らしい先生に出会った。もうページがない。先生・同期の研修生の皆さん、お世話になりました。本当にありがとうございました。

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